「おしえて阿南さん!消費者被害からあなたを守るために」を開催しました
講師:阿南久さん(元消費者庁長官、消費者市民社会をつくる会・ASCON 代表理事)
7月16日、元消費者庁長官の阿南久さんによる講演会を奈良市内でを開催しました。消費者の皆さんに消費者問題を身近に知ってもらい、当法人なら消費者ねっとが目指している「適格消費者団体」や消費者団体訴訟制度についても学ぶ機会として、先の6月通常総会を記念して企画しました。久々の集合形式の講演会となり会場の奈良県文化会館には54人の参加者が集まりました。奈良県の共催をいただくことができ、冒頭には消費・生活安全課 中森功征課長からのご挨拶、結びに奈良県消費者センターの城山二郎所長のまとめの言葉がありました。

講師の阿南さんは、3代目消費者庁長官で初めて消費者団体から着任、国と地方行政と消費者団体の連携に尽力されました。ご講演では行政や団体での自らのご経験を踏まえ、また消費者としての熱い視線をそそぎながら、消費者問題の解決に必要な事柄についてお話しされました。
講演の要旨は次の通りです。
- 愛と思いやりの地域づくり:消費者被害の防止に最も大切なものは何か、それは地域づくりです。地域づくりには思いやりとたすけあいいが不可欠。消費者被害の蔓延には構造的な問題があって、それを阻止するための地域の力をどうつくるか、です。東日本大震災を全国消団連の団体事務所で体験し、それを強く感じました。
社会の課題:「誰一人取り残さない」とする国連持続可能な開発目標SDGs17ゴールを通してみると、貧困、飢餓、ジェンダー平等など、私たちの社会はあらゆる矛盾と山積する課題を抱えています。これらに目を向け思いやりとたすけあいで克服していく必要があります。消費者問題も同様です。
- 消費者相談と被害の状況:ウクライナ情勢を悪用した詐欺、新型コロナ感染症関連の詐欺、自然災害の被災地での住宅修理のトラブルなど、昨今の不安につけ込んだ悪質商法による消費者被害が増えています。横浜市消センの相談傾向を見ると、くらしのレスキューサービスや成年年齢引き下げによる若者をねらったものが増えています。未然防止のためには消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク)において地域連携を深めていくことが求められます。
- 消費者団体訴訟制度:団体訴訟制度も被害の未然防止に重要な役割を果たします。この制度は消費者の運動によって作られ、維持され発展してきました。各団体の活動をWEBサイトでご紹介します。(なら消費者ねっと、ホクネット、京都消費者契約ネットワーク、KC’s等のHPが紹介されました)。
- 団体への支援:国が定めた制度ですがこれらの活動に対し、国からの支援は何もありません。消費者スマイル基金では地域で被害防止や被害救済活動をしている団体を支援するため立ち上げられました。寄付金を集め、まだ十分とはいえない金額ですが毎年度適格団体、特定適格団体、適格を目指す団体へ助成金をお渡ししています。また当基金では、制度とそれぞれの団体の成果をもっとわかりやすく消費者に発信したいと考えています。団体間の情報交流も図れるよう方法も検討します。
- 国・地方・消費者の役割:消費者基本法では、基本的施策の充実のための消費者団体、行政の役割・責務に触れ、地方の重要性を歌っていますが、毎年度の地方交付金は減額され続けています。もっと声を上げる必要があります。
講演のあと、なら消費者ねっとの事業者への申入れ活動の報告を行いました。
- @「結婚式場のキャンセル料」:理事長 北條 正崇 弁護士(これまでの取扱事案から、2019年の結婚式場のキャンセル料の事案をピックアップし報告しました。これはスマイル基金助成金をいただいた事案です。)
- A「公共施設託児所の同意書」:検討委員長 竹内 大敬 弁護士(消費者利益を害する内容の同意書にサインをしないと託児サービスを受けられない、というケースで、この同意書の条項を是正するように申入れをしました。事業者はこちらの申入れに従って改善の以降を示し、その後同意書の使用自体を取り下げました。)
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